長期間弾く予定がない楽器の保管方法

2019年12月17日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗


 仕事の都合とか、子育ての都合、親の介護の都合、色々な理由によって、楽器を長期間弾かないで保管しておくことは珍しいことではありません。また、楽器をグレードアップして、以前使っていた楽器を保管しておく事もあります。

 どのようにして保管したら良いのか、皆さん迷われると思います。我々業者の場合は、専門的な技術がありますから部品を全部外してしまったり、ケースに入れずに保管庫で管理したり、場合によっては作業部屋に吊しておいたりと、割り切った保管方法を採ることも多いのです。しかし今回は、一般的な、確実な保管方法を書きます。

    1. 長期保管する前に、ケースを空にして(楽器や松脂を取り出して)蓋を開けて陰干しすることをお勧めします。次に、ケース内部を掃除機を使って丁寧に掃除してください。

    2. できれば、長期保管する前に「長期保管する」という趣旨を説明して、簡易調整に出すことをお勧めします。なぜなら、楽器が汚い状態で保管しておくと、カビが生えたりするからです。また、駒が反っていたり、弦のサビが余りにも汚いと、保管中の楽器に悪影響を及ぼしてしまいます。簡易的で良いので、調整に出すことをお勧めします。

    3. 楽器を拭く布は取り出しておくか、または綺麗に洗濯をしてからケースにしまっておきます。これはとても重要な事です。

    4. 弦は、駒が倒れない程度にゆるゆるに張力を弱くしてはっておきます。楽器に負担をかけないためです。この時、駒の角度を丁寧にチェックします。また、糸巻きはいつもより少しきつめに押し込んでおくと、楽器保管中に弦が急激に緩んで駒が倒れてしまうというトラブルを防げます。

    5. ケースの小物入れ(肩当てとか松脂を入れる部分)に、新品のシリカゲル袋(DIYショップで売っています。決してお菓子とか海苔とかに付いていた物を使わないでください)を多めに入れておきます。通常の使用においては、このような乾燥剤をケースに入れることは、私は逆に良くないと考えていてお勧めしていません。しかし、長期間密閉しっぱなしにする場合には、乾燥剤を入れる事は効果的と思います。間違っても、乾燥剤が楽器に触れないようにしてください。

    6. ケースを布団圧縮袋にいれて、空気を軽めに抜きます(ビニールがケースにピッタリ貼り付くはずです)。余りむきになって空気を抜かないようにしてください。もっとも、掃除機で吸ったくらいの低気圧で、楽器に悪影響が出るとは思えません。

    7. 楽器を保管しておく部屋は、熱がこもらない部屋に置いてください。部屋の湿度に関しては、布団圧縮袋で密閉していれば、あまり影響はないはずですので、押し入れでも構わないです。従って以後意識(注意)するのは「熱さ」と思ってください。

    8. できれば、2~3年に一度は、専門家のとろこで定期点検をすることをお勧めします。

 

 

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