マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

:分数楽器の呼び方と実際の大きさには何らかの関連があるのですか?

:これは疑問に思っている方が多いようです。これに関しては色々な説があります。例えば「容積の比率」、「胴体長の比率」、「弦長の比率」・・・・。しかし、これらを実際に計算してみると、どれもうまい具合には一致しません。それどころか、分数サイズの大きさ自体に厳密な決まりがないのです。これでは計算自体の意味がありません。

 私の考えは、私の師匠の無量塔藏六氏の推論を受け継ぐものです。それは「呼び方(言葉)」から派生したという考えです。英語やドイツ語などでは(イタリア語は知りませんが)、ごく普通に1/2、3/4、1/4という言葉が使われます。これは数学的な意味合いではなく、大まかな分量的な意味合いでも用いられます。この事を踏まえて考えてみると、おおよその推測ができるのです。

 ヴァイオリンは最初、大人用の楽器(フルサイズ)が作られたはずです。そして次に子供用の小さな楽器を作ったときに、その呼び方を「小さい楽器」という意味で、「1/2」と呼んだのではないでしょうか。これは日本でも「一人前」に対して「半人前」と言う使い方をするのと同じような意味です。当然、数学的な意味合いはありません。
 次に、その中間の大きさの楽器を、「その間に位置する大きさ」という意味で、「3/4」と呼んだと思います。そして楽器の大きさが細分化されるに連れて、同じようにして1/8、7/8などの呼び方も生まれたのでしょう。
 この様な理由から名付けられたために、もともと一般的会話で使われない3の倍数系の分数、すなわち1/3、1/6楽器などというものは存在しないのでしょう。

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