マイスターのQ&A

2019年2月18日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:ヴァイオリンは上げ気味に構えた方が良いのですか?

A: ヴァイオリンを上げ気味に構えて弾いた方が音が良いといって、「上げて構えさせる指導」を積極的に勧める先生もいます。しかし、ヴァイオリンの演奏の理論は物理的(科学的)な根拠のもとにしか成立しません。感覚的なものではないのです。ここが重要なポイントです。

 

なぜヴァイオリンの演奏は顎に挟んで演奏をするのか?

 チェロやギターの人から見たら、ヴァイオリンの演奏形態は奇抜であり、不自然にさえ思うでしょう。なぜヴァイオリンの演奏を、このような演奏形態で実行するのでしょうか?

 それは、その演奏形態が、長年の様々な試行錯誤の上に辿り着いた、「理にかなった演奏形態」だということです。すなわち物理的な「理」が重要なのであって、演奏理論とか、指導理論は、あくまでも後付けなのです。

 

どの楽器の角度が理想的でしょうか?

 下に極端ではありますが3つ楽器の構え方角度と、弓の圧力音効率さを表した図を掲載しました。3つの内、どれが理想的な圧力をかけられると思えるでしょうか? 答えは当然(2)です。なぜならば、地球の重力を効率的に活用できているからなのです。
 すなわち、楽器を上げて弾くこと、または下げて弾くことに積極的な意味は無いのです。楽器は水平に構えて演奏することが理想です。

弓が横滑りしにくいのはどれでしょうか?

 上記写真で、弓が横滑りしないで効率的なボウイングができるのはどれでしょうか? 答えはやはり(2)です。すなわち、楽器は水平に構えて演奏することが理想です。

 

なぜ上げて弾く演奏家がいるのか?

 単なるパフォーマンスです。それも演奏テクニックの一部です。ただ、パフォーマンスと、演奏の基本原理を混同してはいけません。演奏の基本原理は、物理的な「理」の上だけに存在します。


 

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