マイスターのQ&A

2017年8月29日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:糸巻きが回りません、どうしたらよいですか?

A: 糸巻きの動きの状態は楽器によってまちまちですので一概には言えませんが、大ざっぱに言うのならば、糸巻きの調整後から徐々に動きは悪くなっていきます。そして場合によっては、このご質問のように全く動かなくなってしまうという事もありうるのです。
 一般にヴァイオリンの場合、1番弦(E線)の張力が高くて、その糸巻きが緩みやすいのです。さらにE線はアジャスターが付いているために、糸巻きで調弦する機会は少ないです。そう言った理由から、E線の糸巻きはあえて固め(動きにくい)の調整にすることがあります。そうすと、調整から少し時間が経ったときに、全く回らなくなってしまう事も起こるのです。

 

無理やり回してしまうと

 動かない糸巻きを強引に回すと、場合によっては下写真のように、糸巻きが折れてしまうこともあります。特にツゲ材の糸巻きなどは元々の強度があまり強くないために、折れてしまうことは珍しいことではありません。従って、自分自身で無理やり回そうとすることは厳禁です。

 

 

どのようにして回すのか

 ビクとも動かなくなったい糸巻を回そうとすると、折れてしまいます。そこでどうやって動かすのかというと、「押して」緩めるのです。
 下写真の様に、棒で叩きます。こうすると、糸巻きが僅かに緩んで、回すことができるようになるのです。但し、この方法は楽器を傷めてしまう大きな危険性を含んでいます(下写真は撮影のためにポーズを取っただけで、実際の作業形態とは若干異なりますので絶対に真似をしないでください)。最悪、楽器に傷を付けてしまったり、ネックを折るような大事故に繋がる可能性もあるからです。
 糸巻きが回らなくなったら、必ず専門家の元で調整をしてもらってください。



重要なことは自分で弦を交換しないこと

 糸巻きが動かなる不具合が起きる方の多くが、あまり調整に出さなくて、調整間隔が長くなってしまった方や、通販などで弦を購入して自分で弦を交換する人です。
 本来の弦の交換とは単に弦を新品に交換するだけではなく、糸巻きの調整や弦の巻き方での調整、等々とても重要な要素も含んでいます。しかし、通販で弦を購入してしまう人は、目先の弦の安さや、楽器店に行く事を面倒と思って、その「重要なこと」を行わないのです。だから、トラブルが生じてしまうわけです。

 頻繁に調整に通い、弦の交換も専門家に任せるという、ごくごく当たり前の事こそが重要なのです。

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