マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:鳥目杢の楓材とはどのようなものですか?

A:「百聞は一見にしかず」で、まずは写真を見てください。この様に、皆さんがご存じの楓材(虎杢)とはまったっく異なります。しかしこれもれっきとした楓材なのです。そしてこの鳥目杢の楓材で作ったヴァイオリンだからといって、特に変わった音がするわけでもありません。

鳥目目と美観
 鳥目杢の楓材の最大の特著は、その美観です。最上質の鳥目杢の楓材にもなると、その「鳥目」の数、杢の浮き立ち度合いなどは驚くほどのものです。ちなみに写真の鳥目杢楓材は、楽器の質は別の話として、こと「鳥目木材質」に関して言えば、中の上くらいの質です。
 さて鳥目杢を見て、「蕁麻疹が出そう!」と薄気味悪がる人、「美しい!」と思う人の両方が居ることは確かですが、「奇抜さ」ということに関しては意見は一致することでしょう。また、古いヨーロッパ家具などではこの鳥目杢材はよく利用されますから、このような家具になじみ深い人から見ると、「鳥目杢のヴァイオリン」も決して奇抜さだけを狙ったものではないのです。
鳥目杢の方向
 これは専門的な内容になりますが、鳥目杢の材料には裏表が存在します。時々、この事を知らない製作者が逆向きに利用していたりします。鳥目杢の「表」とは、「鳥目」の丸い穴の模様が光って浮き立つ側なのです。これが逆面になると、「鳥目」はくすんでしまいます。
 もっとも、鳥目木材の裏面を使ってしまったからと言って、楽器の音や構造的には全く変わりはないのですが・・・。
鳥目杢の楽器と価格
 これも鳥目杢だからといって、とくに高価ということもありません。希に、希少価値の分だけ若干高めの価格が付けられるということがあるくらいです。鳥目杢の楽器に出会うと、その珍しさに驚いてしまう人が多いのですが、楽器の性能の本質は「杢」」にはありません。くれぐれも「楽器本体」の質を見ることを疎かにしないでください。

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